市民に愛された暴君~ネロ~

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

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暴君・・・ローマ皇帝第五代皇帝ネロ・・・その実像は??
16歳で皇帝に即位し、当時ローマ皇帝史上、最も若い皇帝でした。
若くて有能な皇帝で、即位最初の5年間は黄金の五年間と称賛されることとなります。
そんなネロを一変させたのは・・・??

数多くの古代遺跡が残るローマ・・・
この地下に、ネロが建設した地下宮殿の一部・・・ドムス・アウレア・・・黄金宮殿が残っています。
内部は、黄金、宝石、真珠などで飾られていたといいます。
天井から香水や花弁が舞い落ちる仕掛けがあったとか・・・。
そして、広大な敷地の入り口には、自由の女神に匹敵する巨大なネロの銅像が立っていました。

北はイギリス、南はエジプト・・・広大な領土を支配していたローマ帝国の第五代皇帝ネロは、暴君として知られています。
しかし、僅か16歳で即位した直後、「黄金の5年間」と言われる専制を行っています。
どうして若くしてそんなことができたのでしょうか?
ネロは、西暦37年に、ローマから20キロほど離れた港町・アンツィオで生まれました。
初代皇帝アウグストゥスの末裔でしたが、皇位継承順からして皇帝になる立場ではありませんでした。
そんなネロが皇帝の地位に就くことになったのは・・・母・アグリッピナの計略によるものでした。
アグリッピナは、当時の三代皇帝・カリグラの妹で・・・彼女は、いずれ自分が権力を握りたいという野心を持っていました。
ネロを利用することで・・・!!

「息子をローマ帝国の皇帝にする!!」byアグリッピナ

そして、カリグラが暗殺されクラウディウスが第4代皇帝に着くと、アグリッピナは行動を起こします。
叔父と姪との関係でありながら結婚したのです。
さらにネロが15歳にあると、クラウディウスの娘・オクタビアと結婚させ関係を一層強化していきます。
一方、ネロが皇帝として恥ずかしくないよう、知識や教養を身に付けさせます。
家庭教師は当代随一のセネカ!!
特に力を入れさせたのは演説!!
自分のやりたいことをネロを通じてさせるための布石でした。
しかし・・・ネロには歌手になるという夢がありました。
母の前ではそれを口にすることどありませんでしたが・・・。
母・アグリっピアは権力を好む女性で、カリスマ性がありました。
そんな彼女の望みに反することなど、ネロにはできなかったのです。

そして、西暦54年・・・ネロ16歳の時に・・・。
アグリッピナが夫・クラウディウスを毒殺!!
ネロはそれまでで最年少の皇帝となりました。

まずネロは、元老院での演説に臨みます。
元老院は、かつて共和制の時代は国の最高機関でしたが、帝政の時代に入ってからは力を失いつつありました。
ネロは・・・「元老院は古来の権限を保持すべきである。」と、元老院を味方にする発言をします。
原稿を書いたのはセネカでした。

「私は統治権を行使するにあたり、立派な助言者と手本を持っている。
 まだ、若年のため、誰にも憎悪を抱いたことはないし、侮辱を受けたことはない。
 したがって、復讐など思い立ったことはない。」byネロ

そしてネロは、セネカに助けられながら、黄金の五年間を実現していきます。
歴代皇帝が戦争による領地拡大を目指したのに対し、ネロは内政を優先し、市民生活の充実に力を入れました。
政治理念は「寛容」でした。

「いっそのこと、全ての間接税を廃止したらどうだろう。
 それこそ、人類に与えられる最もすばらしい賜物ではあるまいか。」byネロ

しかし、元老院は税収が減りすぎるため反対!!
ネロは約束通り、元老院を尊重!!
それでも、生活必需品の小麦税を撤廃。

同じ時期に・・・寛容とは全く逆の行動もとっています。
義理の弟・母・妻を相次いで殺しています。
どうして家族を次々と殺したのでしょうか?
ネロが皇帝になると、母・アグリッピナはしばしば政治に口を挟むようになります。
当時女人規制だった元老院に顔を出します。
皇帝の顔を刻印する通貨は・・・母と向き合う顔にされてしまいました。
ネロは徐々に母への不満を募らせていきます。

「大ローマ帝国に君臨している元首にあまりにも似つかわしくない・・・」byネロ

ストレスを解消する為に夜な夜な遊び歩くようになり、羽目を外しやりたい放題・・・
盗みを働き誰かれ構わず殴りかかります。

西暦54年、17歳の時に母と決裂する!!
ネロは政略結婚した妻を愛していませんでした。
17歳の時、その妻オクタビアの侍女であり元奴隷のアクテと恋に落ちます。
初恋でした。

「オクタビアと離婚し、アクテを妃に迎え入れよう」byネロ

アグリッピナは激怒!!

「私を侮辱しているの?
 お前なんかより義弟が皇帝になるべきだわ!!」byアグリッピナ

アグリッピナは、クラウディウスの息子でネロの義弟・ブリタニクスをネロの代わりに皇帝にすると言い放ったのです。
アグリッピナの言葉をきっかけに、二人の関係は緊迫したものとなりました。
クラウディウスがアグリッピナに暗殺されたことをネロは知っていたからです。
母親に殺されるかもしれない・・・身の危険を感じたネロは・・・
西暦55年、17歳の時に義弟・ブリタニクスを毒殺!!
顔面蒼白のアグリッピナ・・・ネロはこの機を逃さず母を宮廷から追放!!
西暦58年、21歳の時にネロは、親友の妻・ポッパエアに恋をします。
ネロは親友を地方に左遷!!
ポッパエアを恋人にしました。
しかし、権力欲の強いポッパエアは制裁になることを望みます。
とはいえ・・・ネロの母は妻との離婚を認めない・・・。
ポッパエアはネロを焚きつけます。

「あなたは、人の命令に縛られて統治権はおろか自由まで奪われているではありませんか。
 もし、そうでなかったら、なぜ私との結婚を延ばしているのでしょう。」byポッパエア

ネロは「母はどこにいようが重荷になる・・・」

西暦59年、21歳の時に母を海沿いの別荘に招待・・・
和解するふりをして手厚くもてなし・・・その帰り道母を特別に用意した特別な船に乗せます。
沖合に出たとき・・・計画通り船は沈没・・・。
ところが、水泳が得意だったアグリッピナは岸にたどり着いてしまいました。
驚いたネロは、兵士たちを送り込みます。
死を覚悟したアグリッピナは・・・

「ここを突け!! 
 ここからネロが生まれたんだから!!」byアグリッピナ

報告を受けたネロは、
「今日という日こそ、余に統治権が与えられたのだ。」byネロ

その後ネロは、妻・オクタビアと離婚、ポッパエアと結婚します。
そして、オクタビアに不倫の罪を着せて殺害したのでした。

母・アグリッピナから解放されたネロは、恩師・セネカも引退させ、思いのままに政治を動かすようになります。
黄金の五年間は終わりを告げますが、ネロはローマ市民から愛されます。
それは、パンとサーカスに力を入れたからです。
当時のローマ市民は・・・「快楽は最高の宝!!」・・・広大な領土からもたらされる富で、享楽な日々を過ごしていました。
食べ物の無償配給、娯楽の提供・・・パンとサーカスことが、市民の支持をえる切り札でした。
とりわけネロが力を入れたのがサーカス!!
戦車競走の出走回数を激増!!
剣闘士試合はほとんど殺し合いのような過激なものに!!
元老院議員の陸上競技会の実施。
人々を大いに喜ばせます。
さらにギリシャの祭典・オリンピア協議会を手本とし、「ネロ祭」を開催。
当時ギリシャはローマの支配下にあったもののネロは、芸術や文化の先進地域として強いあこがれを抱いていました。
この祭典でネロは、本来の運動競技以外にも音楽、詩の朗読も種目に加えます。
そして、子供のころからの夢であった歌手としての成功を実現しようとします。
声量をあげるために、鉄板を胸で支えることを日課に・・・!!
発生に有害だとされる食物は口にしない。
喉を傷めないように兵士への命令は文書で・・・!!

西暦64年、26歳の時にネロは念願の歌手デビューを果たすのです。
皇帝の歌に劇場は超満員!!
ネロの舞台は芝居がかっていて、自分では教養溢れるものだと思っていました。
その姿をあらゆる階級の人々に見せることで、自分がこれまでにない最高のローマ皇帝であることを示したかったのです。
しかし、その歌声は大したものではなく・・・。
とはいえ、周囲の人間はネロのプライドを傷つけるわけにはいかない・・・
警備兵が拍手を指示!!退屈そうな客は処罰されました。
自信を持ったネロは、次々と舞台に立ち、朝から晩まで歌い続けることも・・・!!
途中退場が許されないので、その場で出産する人までいたといいます。
そんな実情を知らないネロは・・・「芸は身を助ける!!」と、思っていました。

即位から10年余り・・・市民から絶大な支持を得ていたネロ・・・
しかし、突然暴君という名を残すようになります。

破滅のきっかけとなったのは・・・
西暦64年、26歳の時のローマの大火でした。
町の一角から上がった炎は、強風にあおられ瞬く間にローマの中心部に広がります。
この時、別荘にいたネロは急いでローマにもどり、消火と被災者救済に・・・!!

「今すぐ宮殿の庭を開放して、民衆を非難させろ!!」byネロ

火災は、6日後にようやく鎮火・・・
街の大部分が焼け野原となってしまいました。
ネロはローマの街の再建に当たり・・・憧れのギリシャ風の美しい街にしようとします。
その中心には・・ドムス・アウレア・・・黄金宮殿を・・・!!
入り口には、高さ30mを越えるネロの銅像が!!
東京ドーム15個分とも50個分ともいわれる敷地は、市民にも開放されていました。
しかし、市民の反応は・・・??
「ネロが火をつけさせた!!」
大火に喘ぎ、生活に困窮する市民たちの間で、この宮殿を作るためにネロが放火させたという噂が・・・!!
遂には、ローマが燃えるのも見ながら竪琴をひきながら歌を歌っていたという噂まで・・・!!
驚いたネロは、必死で噂を消そうとします。
そして、放火犯に仕立て上げられたのは・・・まだ新興宗教に過ぎなかったキリスト教信者でした。
ネロは、彼らを処刑し、それを見世物とします。
迫害さるキリスト教信者たち・・・ネロを強く非難します。
ネロは、最初にキリスト教徒を迫害した皇帝として、記憶されることとなるのでした。
このことが、後世における暴君という評価を決定づけるものとなってしまったのです。

市民から愛されることで国を統治しようとしてきたネロ・・・
その歯車が回らなくなっていきます。
西暦65年、27歳の時にネロ暗殺の陰謀が発覚!!
企てたのは、元老院議員を含むローマの有力者たちでした。

「ありとあらゆる破廉恥で汚されたネロを救うには、もはや殺す以外に手はない!!」

疑心暗鬼に陥ったネロは、少しでも陰謀に関わったと思われる者たちを処刑していきます。
かつての恩師・セネカさえも自殺に追い込みます。
苛立ちを深める中・・・妻・ポッパエアから帰宅が遅いとなじられます。
するとネロは、怒りに任せて妊娠中の妻の腹をけり・・・ポッパエアを殺してしまいました。

もう、抑えのきかなくなっていたネロは、現実から逃れようとギリシャに旅立ちました。
ここでネロは、政治にかかわることなく歌手として過ごします。

「ただ・・・ギリシャ人だけが、音楽を聴く耳を持っている。
 私にふさわしく、私の努力に値するのはギリシャ人だけだ。」byネロ

ネロは次々と競技会に参加!!

あらゆる競技会に、ネロが出場できるように日程の調整が行われました。
もちろん、そのすべてで優勝しました。
ローマ皇帝を勝たせないわけにはいかなかったのです。
それでもネロは、審査が公平だと信じて、結果発表を不安げに待っていました。
優勝を告げられると満面の笑みで喜んだといいます。
結局ネロは、1年4か月ギリシャに滞在しました。
そして、様々な大会で優勝した1808個の月桂冠をもって帰国し、市民から熱狂的に歓迎されます。

しかし・・・国を空けている間に危機が迫っていました。
フランスやスペインにあたる地域から反乱が・・・!!
この事態に対し、ネロが元老院で行った演説は、議員たちを唖然とさせます。

「私は丸腰で反乱軍の前に現れて、ひたすら涙を流してやる。
 こうして、ならず者どもに、自分のやったことを後悔させたら翌朝は、楽しく祝勝歌を歌うのだ!!
 そうだ、今のうちに、その歌を作っておかなくては・・・!!」byネロ

さらにネロは、最後の砦だった市民の信頼も失ってしまいます。
各地で反乱がおきる中、ローマでは食糧不足に陥っていました。
そんな中、到着した船に歓声をあげます。
しかし・・・積まれていたのは、競技場のための砂だったのです。
怒りはネロに向けられます。
パンとサーカス・・・どちらが重要か、ネロは見誤ったのです。
遂に、元老院はネロの処刑を決議!!
逃亡するネロについてきたのは、僅か3人でした。
最早、自決する以外にない・・・??
しかし、ネロは
「誰か先に手本を示してくれ・・・
 ああ・・・世間は何と惜しい芸術家を失うことか・・・
 さあ・・・奮起せよ!!」byネロ

ネロ・・・西暦68年6月9日ネロ死去・・・30歳。

キリスト教徒を最初に迫害した皇帝であったが為に暴君と呼ばれたネロ・・・。
しかし近年、その人物像は見直されつつあります。
2010年には、生誕の地アンツィオに銅像が建てられました。
そこにはネロの治世を評価する言葉が刻まれています。

「その治世において、帝国は平和かつ栄光に輝き、偉大な改革を成し遂げた」

ネロの死後40年もたたないうちに、黄金宮殿は火災で焼失しました。
しかし、16世紀にその一部が発見され、ルネサンス文化に影響を与えます。
ルネサンスを代表する芸術家ラファエロは、黄金宮殿の装飾模様に感銘を受けます。
そして、ローマ教皇が暮らすバチカン宮殿にその模様を取り入れたのです。
ネロが信じ続けた芸術は、思いもよらないところで今も息づいています。

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