軍事司法制度(19)

(2)軍事犯罪と一般犯罪
 フランスの軍法は、軍事犯罪を主として規定しており、軍事の一般犯罪は刑法犯として告訴され、一般の司法裁判所で裁判を受ける。もし、その者が戦場で勤務中の時は軍事法廷(軍法会議)で裁かれることになるが、その者は国民全部に適用される刑法犯で告訴される。
 なお、命令と服従の関係においてフランス等の大陸諸国は、下級者は上級者の命令に絶対に服従しなければならないとし、命令の実行によって生じた責任は命令権者が負い、命令者の責任は問わないというのが原則であった。犯罪をやれと命ぜられた下級者が、これに同意して実行した場合に限り、例外として共謀、共犯者とされることがあった。
(3)軍事裁判(軍法会議) 
 日本陸海軍が、司法制度の模範としたフランスのラグス・マルモンの『軍制要論』は、軍事裁判を「已ムヲ得サルヲ以テ基本トス」としている。
 軍事裁判は軍紀を行う手段であり、軍紀は軍を存する方術である。このため、軍紀を維持し、軍紀の必須を知覚し、自分自身も義務を果たし、利害を共にする人によって軍事裁判が行われる必要がある。軍事裁判は、必ずしも徳義の正理によらず、やむを得ないことを基本としている。軍律は重く、軍の連係を維持するため軍法会議は苛酷となる。しかしながら、それはやむを得ないためだとしている。
 例えば、隊長が兵に斥候を命じたところ、兵が生命の危険を感じ、命令を拒否した場合には、それは認められるのであろうか。軍人には、身命を捨てて任務を尽くす義務がある。もし、これが認められるのであれば、軍隊における命令・服従関係が成り立たなくなる。命令に対する服従は軍紀である以上、軍紀を維持するためには抗命に対して軍法会議は苛酷となる。それも軍紀を守るためには、やむを得ないということである。
 二つの軍法会議を定める。
 一つは、本土内に置かれる恒久的な軍法会議で、7名、うち6名は将校、1名がその地域の文民裁判官である裁判長によって構成される。
 一つは、軍事作戦中に戦場で召集されるもので、軍人のみによって構成される。