ロシア海軍の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの為だったウラグバの埠頭は放置されている

17-0528a.jpg
『中央海軍ポータル』(フロートコム)より
2017年5月25日12時32分配信
【放置された「クズネツォフ」の為のヴィジャエヴォの埠頭は機器の一部を失っている】

重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」の為の浮き埠頭プロジェクト16182は、稼働不能となっている。
施設を設計した中央設計局『モノリート』の総取締役ウラジーミル・ヴォルコフは『中央海軍ポータル』へ話した。
ヴィジャエヴォ近郊のウラグバに在る埠頭は、2000年代初頭からは、その用途の為に使用されていない。
業界は、それを復元する用意があるが、海軍の決定を待っている。


「クズネツォフ」の為の埠頭は長い年月を経た後、それ自身は保持されているが、その機器の一部は失われたか、或いは動作不能状態に在る。

『中央海軍ポータル』設計局から伝えられたように、2016年1月、設計局の専門技術者は、施設の状態を評価する為にヴィジャエヴォへ行き、その後、近代化の為の提案を用意している。
エンジニアは埠頭を調査し、ポンツーン本体、ブリッジ装置、沿岸の結合施設、パイプライン機構一式、船舶用システム、電気機器の状態を評価した。

[レポート:「クズネツォフ」の為の埠頭は機器が失われ、それは稼働しない]
施設のポンツーン本体と船舶用装置の状態は、中央設計局『モノリート』の評価では、悪くない。
「ただ、幾つかの要素は欠けておりますし、埠頭の金属棒は交換する必要が有ります」
設計局
『中央海軍ポータル』特派員へ伝えた。

レポートの抜粋

「配管系機構一式は稼働不能であり、その大部分は撤去され、舟橋間とブリッジ接続部、配管の付属品は欠けている。
特に、配管支柱、ホース装置支柱と幾つかの配管システムは残されている」

「船舶用システムは不完全な状態に在る」

「電力舟橋の電気機器は非稼働である」

「電力舟橋の電気機器は不完全な状態に在る。
高圧配電装置は稼働不能であり、機器が無い。
照明装置パネル、無効電力代用装置は稼働不能であり、制御ブロックと機器が無い。
沿岸の高圧電源ケーブルと電源間引込配分装置と変圧器は交換が必要である」

北方艦隊
広報サービスは、施設の状態に関する『中央海軍ポータル』の質問への回答を拒否した。
それはロシア国防省へ送られた質問に沿っている。

[「クズネツォフ」に浮き埠頭は必要か?]
元海軍総司令官ウラジーミル・マソリン上級大将は、埠頭の状態が悪化している事は驚く事では無いと『中央海軍ポータル』へ語った。
「それは何の保護も有りませんし、何処でも歩き回れます。
2000年代初頭から、巡洋艦はヴィジャエヴォに姿を見せていません」
マソリンは、巡洋艦のウラグバへの駐留は、湾の地理的位置とインフラストラクチュアの不足が故に不便であると話した。
彼によると、現状では、「クズネツォフ」は工場の近くに駐留する事が望ましい。


同時にマソリンは、このような埠頭は、海軍にはまだ必要であると語った。
「その作成に従事するのは、今でしょう。艦は駐留システムと共に設計されるものですから。
それは長期に渡るものとなり、高価であり、海軍は、ソヴィエト時代ですら、それを行なう為の時間的余裕は有りませんでした」

上級大将は、こう考えている。

艦は、1991年から1996年まで公式にヴィジャエヴォへ駐留し、第43ロケット艦師団へ加入していた。
その後、同艦は駐留場所を『第35艦船修理工場』の岸壁へ変更した。
ヴィジャエヴォの埠頭は、事実上放棄され、おそらくは保護されないまま残された。

マソリン提督は、海軍の指導部が、単に「埠頭の移転或いは保守を維持する為のタイムリーな決定を下さなかった」と見ている。
彼は更に、水上艦の為のインフラストラクチュアの不完全さは、沿岸の電力共有システムと、そのリソースを製造する機器が必ずしも全てでは無いと言った。

重航空巡洋艦「アドミラル・ゴルシコフ」の最後の艦長イーゴリ・リャブコフ1等海佐は、彼の巡洋艦は、このような埠頭を使用しなかったと『中央海軍ポータル』へ語った。
「ゴルシコフ」は、『セヴマシュ』か、『第35工場』か、セヴェロモルスクの停泊用樽に停泊していた。
彼によると、ヴィジャエヴォの施設は「他の理由により衰退し、放置されました。
貴方は1990年代に何が起こったのかを覚えているでしょう」
リャブコフは語った。


彼は、今、埠頭は、特に現状では巡洋艦に必要ないと付け加えた。
ただし、士官は、海軍の艦の為のインフラストラクチャには幾つかの問題点を見出している。

[『中央海軍ポータル』参考資料]
超重鉄筋コンクリート浮き埠頭プロジェクト16182
は、ゴロデツコイ造船所-現・公開株式会社『造修・造船営団』で建造された。
1989年に施設は発注者へ引き渡され、ヴィジャエヴォ近郊のウラグバへ設置された。

埠頭の岸壁は、沿岸に沿って設置されており、同様の施設と比べて寸法は小さい。
開発者によると、それは、嵐の条件下で係留されるする海軍の大型航空艦の停泊の課題を解決する。

1978年、このような埠頭が無かったが故に重航空巡洋艦「キエフ」セヴェロモルスクでスコールの為に停泊用樽から引き離され、錨を降ろし、エンジンを作動させたにも関わらず座礁した。

施設の全長は255メートル、本体幅13.5メートル、床からの深さ4メートル。
埠頭には、2つの電力舟橋を含む5つのポンツーンが有る。

これは、「ユニークかつ唯一のこの種類の埠頭」と開発者が言うように、排水量8万トンまでの航空巡洋艦の停泊を保障する。
それは、深さ50メートルまで、波の高さ2メートルまで、風速毎秒40メートルの場所に設置される。

『モノリート』『中央海軍ポータル』へ話したように、文書では埠頭の寿命は30年となっているが、実際には、これらの施設は半世紀か、それ以上使える。

再び埠頭を使用する為には、近代化と復旧作業のプロジェクトが必要であると『モノリート』総取締役ウラジーミル・ヴォルコフは『中央海軍ポータル』へ語った。
設計局は、然るべき算定を既に行なっている。


『中央海軍ポータル』は、埠頭の建設者-『造修・造船営団』とも接触した。
同社は『中央海軍ポータル』へ、工場は、類似の施設を建設する全ての必要な技術的作業の準備を整えていると確約した。



[重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフの経歴(ロシア国防省公式サイト)]

プロジェクト11435重航空巡洋艦「アドミラル・フロータ・ソヴィエツカヴァ・ソユーザ・クズネツォフ」は、1990年12月25日にソ連海軍へ納入され、海軍旗初掲揚式典を開催し、北方艦隊へ編入され、正式にソ連海軍へ就役しました。
17-0121c.jpg

その後、ソ連邦解体直前の1991年12月1日に黒海沿岸セヴァストーポリを出航し、12月24日に北方艦隊基地ウラグバ(ヴィジャエヴォ)へ到着しました。
[エクソダス~空母クズネツォフ回航~(1991年12月)]

「アドミラル・クズネツォフ」が到着したウラグバには、今回の記事に登場する同艦の為の専用埠頭プロジェクト16182が用意されていました。
17-0528c.jpg
17-0528g.jpg

北方艦隊には、「アドミラル・クズネツォフ」の前に2隻の重航空巡洋艦「キエフ」「バクー」(アドミラル・ゴルシコフ)が配備されていましたが、同艦隊の大型水上艦用基地セヴェロモルスクには、これらの艦が接岸できる埠頭も桟橋も無く、この2隻はセヴェロモルスク沖に停泊していました。
17-0528m.jpg

重航空巡洋艦「キエフ」
17-0528i.jpg

重航空巡洋艦「バクー」(アドミラル・ゴルシコフ)
17-0528h.jpg

これでは何かと不便な為、重航空巡洋艦の為の基地として、セヴェロモルスクから離れたウラグバ基地に白羽の矢が立てられ、プロジェクト16182浮き埠頭が運び込まれました。

プロジェクト16182浮き埠頭は8万トンまでの重航空巡洋艦が停泊できるとの事ですから、「アドミラル・クズネツォフ」の次に北方艦隊へ配備される筈だった重原子力航空巡洋艦「ウリヤノフスク」にも対応していたようです。
(「アドミラル・クズネツォフ」の姉妹艦「ワリャーグ」太平洋艦隊配備予定だった)
[未完の原子力空母ウリヤノフスク]

「アドミラル・クズネツォフ」は1990年代末までウラグバ基地に駐留していましたが、当時のロシア海軍の極度の財政難により満足な整備が出来ず、艦の状態が悪化した為、2000年代初頭にはムルマンスク『第35艦船修理工場』へ回航されてオーバーホールが行なわれました。
[1993年のウラグバ基地]
[ウラ・グバ港(ヴィジャエヴォ)]
17-0528b.jpg

「アドミラル・クズネツォフ」は2004年秋には修理を終えて復帰しましたが、二度とウラグバ基地へ戻る事は有りませんでした。
[クズネツォフ復帰まで~1990年代末~2004年~]
17-0528j.jpg

その後、「アドミラル・クズネツォフ」は何度も地中海への遠距離航海を行ない、2016年11月にはシリアへの空爆作戦へ参加しました。
[ロシア海軍北方艦隊の重航空巡洋艦アドミラル・クズネツォフは就役25周年を迎えた]
[空母アドミラル・クズネツォフ第6次地中海遠征(2016年10月-2017年2月)]

この間、ウラグバ基地プロジェクト16182浮き埠頭は放置され、荒れ果ててしまいました。
17-0528e.jpg
17-0528f.jpg
17-0528d.jpg

今回の記事のように、最近になって、このプロジェクト16182浮き埠頭を復活させようという動きが出てきましたが、実現する可能性は限りなく低いでしょう。